Jalal al-Din al-Suyuti

[42]　Jalāl al-Dīn al-Suyūṭī, ʻAbd al-Raḥmān b. Abī Bakr (d. 911/1505–6)
جلال الدين عبد الرحمن بن ابي بكر السيوطي‏

ジャラールッディーン・スユーティー　Jalal al-Din Abd al-Rahman b. Abi Bakr al-Suyuti

エジプトでマムルーク朝末期に活躍した学者。タフスィール学、ハディース学、アラビア語学、文学、歴史学、シャーフィイー学派法学など幅広い分野で活躍した。

カイロの学者の家庭に生を受けた彼は、幼時から学問で頭角を現し、869/1463年、弱冠18歳にしてシャイフー・モスクの法学教授職につき、877/1472年にはシャイフーニーヤ・マドラサのハディース教授職を得た。ムハンマド・サハーウィー（902/1497没）をはじめ多くの論敵と、神学・法学・スーフィズムなどに関して多くの論争を行い、80年前後には自らの権威で法学判断を引出せるムジュタヒド、900/1494年の少し前にはヒジュラ暦9世紀のムジャッディド（各世紀に1人現れる改革者）である旨を宣した。この間891/1486年にはバイバルスィーヤ・ハーンカーの管理を委ねられた。

この時期のウラマーの多くがそうであったように、彼自身も同時にスーフィーであった。シャーズィリー教団に属し、ムハンマド・マグリビー（910/1504没）に師事し、アブドゥルカーディル・シャーズィリーらを育てた。また、イブン・アラビーやイブン・ファーリドらスーフィー思想家の正しさを擁護した。この頃からマムルーク朝スルターンとの折合いは悪くなり、徐々に公職を辞するようになる。他方、マムルーク朝に当時保護されていたカリフの知己を得、902/1496年にはカリフ、ムタワッキル・アラー・アッラー（在位884/1479–903/1497）から、四法学派の全カーディーの上に立つ大カーディーqāḍī kabīrに任じられたが、他のウラマーたちの敵意によって、この命は後に撤回された。晩年は公職を離れ、カイロのローダ島の寓居で著述に専念した。

イスラーム諸学の多くの分野で大きな足跡を残し、著作は数百を数える。イブン・アラビーを擁護したものに『イブン・アラビーの嫌疑払拭についての愚昧者への警告』（Tanbīh al-ghabī bi-tabri’a Ibn al-‘Arabī）、シャーズィリー教団がシャリーアとタリーカを調和させているとしたものに『高き真理の祝福とシャーズィリーヤのタリーカの建設』（Ta’yīd al-ḥaqīqa al-‘alīya wa tashyīd al-ṭarīqa al-Shādhilīya）がある。タフスィールでは、師al-Maḥallī Jalāl al-Dīnの後を継いで有名な『二人のジャラール（ッディーン）の啓典解釈書』（Tafsīr al-Jalālayn）を完成させ、ハディースでは、根拠薄弱（ダイーフ）とされるものも含めた膨大なハディース集成『大集成』（Jāmi‘ al-masānīd）、歴史学では『カリフたちの歴史』（Ta’rīkh al-khulafā’）、エジプト史である『講話の美質』（Ḥusn al-muḥāḍara）などを遺した。なお、彼の著作目録として、Aḥmad al-Sharqāwī Iqbāl, Maktaba al-Jalāl al-Suyūṭī: Sijill yajma‘u wa yaṣifu mu’allafāt Jalāl al-Dīn ‘Abd al-Raḥmān al-Suyūṭī がある。（東長靖）