オンデマンド講演会「移民ムスリムたちの今: 地域のマイノリティとして生きる」(Sophia Open Research Weeks 2024企画)

上智大学イスラーム研究所と京都大学ケナン・リファーイー・スーフィズム研究センターは2024年11月11日(月)~12月1日(日)に、オンデマンド講演会「移民ムスリムたちの今:地域のマイノリティとして生きる」(Sophia Open Research Weeks 2024企画)を開催します。


【プログラム】

企画立案 赤堀雅幸(上智大学総合グローバル学部教授、イスラーム地域研究所長)

新井和広(慶應義塾大学商学部教授)
「ムスリム社会に暮らすムスリム・マイノリティ:東南アジアにおけるハドラミー・アラブ」

岡戸真幸(上智大学イスラーム地域研究所共同研究所員)
「クウェートとカナダ、それぞれに向かうエジプト人出稼ぎ者・移民のつながり」

鈴木麻菜美(京都大学ケナン・リファーイー・スーフィズム研究センター特定研究員)
「オーストリアに渡った信仰と音楽:トルコ系ムスリム・マイノリティによる実践と継承」

沼田彩誉子(日本学術振興会特別研究員-PD 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
「日本社会に暮らしたムスリム・マイノリティ:テュルク系タタール移民と『故郷』」

【問い合わせ先】
上智大学イスラーム地域研究所:sias-co@sophia.ac.jp

*本講演会は、JSPS科研費 JP21KK0001、JP22H00034の助成を受けた研究の成果です。

詳細はhttps://dept.sophia.ac.jp/is/SIAS/achievement/2024/sorw_2024.html

2024年度第2回「穏健イスラーム」研究会 報告

科研基盤A「非アラブにおける穏健イスラームの研究-インドネシア・パキスタン・トルコの事例から」                                       2024年度第2回研究会(「穏健イスラーム」研究会)
【日時】2024年 8月8日(木曜日)13:00~17:00京大
【場所】京都大学吉田キャンパス本部構内 総合研究2号館4階 AA447(会議室)

【報告1】鎌田繁「クルアーンと穏健の思索」
イスラームにおける思想や実践はその根拠を神の言葉、クルアーンに置くことをねらう。穏健なものであれ、過激なものであれ、イスラーム的正当性を獲得するためにはクルアーンの探求は不可欠である。テクストの文字通りの意味だけでなく、場合によってはそのテクストを無効にするような解釈技法を通してクルアーンからメッセージを引き出そうとする。現在の「穏健な」イスラームと(それと対比される「過激な」イスラーム)はムスリムが現在置かれた社会的、政治的、文化的状況のなかで生まれているものであり、近年のクルアーン注釈(タフシール)には註釈者の立場とともにそのような背景が看取されるのではないかと思う。古典的な註釈と近年の註釈を対比することによって現代のさまざまな思索のあり方が見えてくると考えられる。

【報告2】黒田彩加「現代アラブにおける宗教復興と「中道的イスラーム(ワサティーヤ)」のポリティクス」                                                    本報告では、現代イスラーム思想で用いられる語である「中道的イスラーム(ワサティーヤ; al-wasaṭiyya)という用語の起源や使用法に関する考察を行った。現代アラブ・イスラーム思想においては、イスラームにおける「穏健」の文脈で「中道的イスラーム(ワサティーヤ)」というスローガンが頻繁に用いられるようになっており、ここから着想を得て、中道派という分析概念が日本でも用いられてきた。
先行研究によれば、アラビア語のワサティーヤは、20世期半ばにアズハルのウラマーが用い始めた語とされるが、その意味するところについては、時代とともに変化が見られる。1970年代以降の宗教復興期においては、ムスリム同胞団との関わりも深かったウラマーのユースフ・カラダーウィーがこの語を用いて、中道的イスラーム(ワサティーヤ)という語がひろく知られるようになった。さらにエジプトでは、イスラームと近代性の両立を目指す在野の知識人たちが、必ずしも中道的イスラームという語を著作の中で用いてはこなかったものの、穏健・改革志向の言論活動を重ねてきた。エジプトやアラブにおいて、2010年代半ば以降、中道的イスラームを提唱するアクターの関係性に変化が生じていることも、本発表で部分的に論じた。
発表後の質疑応答では、各国で「中道派」とされる知識人たちのバックグラウンドの相違、アズハルとモダニストの知識人たちの緊張関係、アラブと非アラブの中道派の論点の相違などに関する議論が行われた。

2024年9月21日 2024年度第3回「穏健イスラーム」研究会を実施しました

科研基盤A「非アラブにおける穏健イスラームの研究-インドネシア・パキスタン・トルコの事例から」(22H00034)による 2024年度第3回研究会(「穏健イスラーム」研究会)実施しました。
【日時】2024年9月21日(土曜日)10:00~11:00
【場所】オンライン
【プログラム】
井上あえか、山根聡「パキスタン調査報告」

2024年8月31日 パキスタン・パンジャーブ大学でのセミナーの様子がパキスタンの新聞に掲載されました

当センター長・東長靖、山根聡先生(大阪大学)、井上あえか先生(岡山就実大学)が発表を行ったセミナーの様子がパキスタンの日刊紙Nawa-i Waqt(時の声)に掲載されました。本セミナーは、科研基盤A「非アラブにおける穏健イスラームの研究-インドネシア・パキスタン・トルコの事例から」(22H00034)の一環として開催したものです。

記事翻訳
「パンジャーブ大学、日本の3大学合同による国際会議」
「会議の締めくくりにムハンマド・カームラーン博士:ウルドゥー文学の観点から議題に関する言及」

(本文)
「ラーホール(特派員) パンジャーブ大学のウルドゥー言語・文学研究所と日本の3大学、京都大学、大阪大学、岡山就実大学の合同による国際会議「社会と中道派:21世紀において」が過日開催された。会議の主賓はサリーム・マズハル国立国語普及研究所長で、海外からは大阪大学の山根聡博士とマルグーブ・フサイン・ターヒル博士、京都大学から東長靖博士、岡山就実大学の井上あえか教授が参加した。会議の席ではジャミール・ジャーリビー記念研究所長のズィヤーウル・ハサンが会議に対する謝辞を述べ、会議の終わりには、オリエンタル・カレッジの校長ムハンマド・カームラーンがウルドゥー文学の見地から議論に関する談話を行った。日本の教授には記念の楯と伝統的なショールが送られた。