ケナン・リファーイー・スーフィズム研究センターへようこそ
2016年3月6日に、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科は、トルコ共和国イスタンブル市のウスキュダル大学附属スーフィズム研究所および同センターを財政支援しているトルコの「ケリム財団(Kerim Foundation)」と連携し、京都大学ケナン・リファーイー・スーフィズム研究センター(Kenan Rifai Center for Sufi Studies)を設立いたしました。
本センターは、スーフィズム(イスラーム神秘主義)を中心とするイスラーム研究を推進することで、本学における中東・イスラーム研究を世界的レベルに発展させるだけでなく、わが国における正しいイスラーム理解の促進をめざします。
アジア・アフリカ地域研究研究科附属ケナン・リファーイー・スーフィズム研究センター長
東長 靖
センターの概略
スーフィズムは通常「イスラーム神秘主義」と訳され、イスラームの豊饒な精神性・内面性を示しています。もっぱらテロや紛争などの側面しか焦点を当てられていないイスラームに対する見方を是正するためにも、スーフィズム研究は喫緊の課題と言えます。
これまで日本には、井筒俊彦(慶応大からカナダ・マッギル大)に始まるスーフィズム研究の伝統がとだえずありますが、スーフィズムに焦点を当てて教育・研究を遂行する施設は、これまで日本には存在しませんでした。京大にこのセンターが設立されたことは、日本におけるイスラーム研究上、画期的なものと申せるでしょう。
センターの正式名称はKenan Rifai Center for Sufi Studies attached to Graduate School of Asian and African Area Studies, Kyoto Universityです。Kenan Rifai というのは、トルコにおけるスーフィズム研究を推進した人物の名前です。
ケリム財団について
本財団は、現理事長ジェマールヌール・サルグト女史(1952年生まれ)によって、2013年に設立されました。同女史はイスラーム哲学の分野で博士号を取得しています。1966年に設立されたトルコ女性文化協会(TURKKAD)の理事を経て、本財団の設立者兼理事長となっています。
本財団は、文化・科学・芸術分野の振興を目標に、トルコを中心に活動を続けており、ウスキュダル大学にスーフィズム研究所を設立するとともに、2015年度(9月から)には大学院修士課程を設けて、教育も行っています。他方、国際的な活動も盛んで、トルコ女性文化協会時代からの取り組みを受け継いで、米国ノース・カロライナ大学・イスラーム研究講座(2000年設立)、中国北京大学・人間文化研究所(2009年設立)の運営を行っています。
関連URLは以下の通りです(基本的にトルコ語。一部英語)
ケリム財団:http://www.kerimvakfi.org/pg/anasayfa
ウスキュダル大学について
脳科学・心理療法を主とする医療グループであるNPグループを母体として、2011年に正式に発足した私立大学。コミュニケーション学部・保健学部・工学自然科学部・人文社会学部からなり、健康サービス専門学校、および社会科学研究所・文理科学研究所・保健科学研究所・スーフィズム研究所の4研究所を有しています。
関連URLは以下の通りです(トルコ語・英語)
ウスキュダル大学:http://www.uskudar.edu.tr/
スーフィズム研究所:http://tasavvuf.uskudar.edu.tr/
ケナン・リファーイーについて
上述したケナン・リファーイーは、1867年に当時はオスマン帝国領だったギリシアのテッサロニキに生まれた、20世紀前半におけるスーフィズムの代表的な人物です。1925年に新生トルコ共和国において政教分離政策が断行され、スーフィー教団が閉鎖された後は、教育者・研究者・著述家として活躍しました。中世の著名なスーフィーであるアフマド・リファーイーに関する研究、ペルシア神秘主義詩の最高峰ルーミーの主著『精神的マスナヴィー』に対する注釈等の業績で知られています。1950年にイスタンブール市で没しました。